いつでも微笑みを

体を壊してやりたいこともなくなってしまったから、自分が思っていることを伝えたいことをとりとめもなくかいていくよ。

【自己を主張する勇気】君の嘘と、やさしい死に神【読書感想】

「他人とぶつかりたくないからって本音を呑み込んだら、自分にしか分からない悔いが残って、誰にも肩代わりしてもらえなくて、死ぬまで引きずらなきゃ行けない」

 あらすじ

 きっと奇跡は起こらない。
――最期の思い出を、ください。

その恋は、サヨナラと一緒に降ってきた――。
通り雨が過ぎて虹が出た昼休み、高二の百瀬太郎は同学年の美園玲と運命的に出会う。美少女なのにクラスメイトとどこか距離を置いているクールな玲に、何故か百瀬はなつかれる。幼少期のトラウマで「嫌だ」と言えない性格もあって、百瀬は強引に文化祭の準備を手伝わされる羽目になり、「ある作戦」を実行するため奔走するうち、二人の気持ちは近づいていく。
そんな時、逃れられない過酷な出来事が二人を襲う。感動、切なさ、悲哀、そして愛しさ……温かな涙が溢れる、究極の青春ラブストーリー。

公式サイトより抜粋 

 

この作品を三行でまとめると

  • 自身が思うほど相手は気にしていない
  • 記録より記憶に残る生き方
  • 最期は幸せな記憶を

 

感想

 あらすじの通り主人公百瀬は、幼少期のトラウマから誰かに頼まれると断ることが出来ない性格です。こういう人って現実にも結構いるなと思うのですが、百瀬のその度合いは生半可な物ではありません。同時に複数の文化祭準備を頼まれたあげく、頼んだ人たちはなにもしない。それに対して百瀬は心の中では不満をもちますが、決して口には出さず黙々と頼まれごとをこなします。さすがにこの性格は読んでいてイライラしました。

 そんな読者のことを代弁してくれるのがヒロインの玲。玲も百瀬に文化祭の手伝いを頼みます。しかし彼女は百瀬に準備を投げっぱなしにするのでは無くきちんと自分でも準備を進めていきます。玲は携帯電話をもっていないので、放課後百瀬と仕事をするには直接彼を捕まえに行く必要があります。百瀬は毎日違う部活動(人数合わせの名前貸し所属)や、自身のクラスの出し物の作業を一人でやっています。頼んだ側の人間は遊んでいたり、真面目に取り組もうとはしません。それを見た玲は、あなた達は頼んでおきながら仕事を押しつけて、自分たちは遊んでいるなんてどういう了見とズバッと指摘をします。百瀬にもきちんと嫌なら嫌とはっきり言わないとダメだと指摘をします。その通り過ぎてぐうの音も出ないとはまさにこのことを言うのではないでしょうか。その様子は爽快で気持ちよく、格好よくて賞賛したいと思いました。

 確かに頼まれごとを断らずなぁなぁでもいいのでこなしていれば、軋轢など生まれることはないかもしれません。しかしそのままではいずれ変わりはいくらでもいると切り捨てられてしまうと思うし、なによりやっていて楽しいとは到底思いません。やるなら楽しんでやった方が成果も出るし、そのまま続けていれば精神的に辛くなってしまいます。学生時代は耐えられても、きっと就職してから苦労すると思うんですよね。仕事では誰も助けてくれませから若いうちにこういう癖がつくと、まともに生きていけません。学生時代にこういったことを指摘してくれる人が現れるのはとても幸せなことですね。

 印象に残っているのは文化祭の出し物の連練習のしているとき、百瀬が携帯電話で録音するといいよと玲にアドバイスを送るのですがそれを拒否します。そして

「記憶に残るならいいの。でも携帯とかで記録してると、皆安心してよそ見するでしょ。後で見返せばいいや、なんていいながら、結局見もしないでデータだけたまってくでしょ? それが嫌なの。私はいつも、目の前にいる私のことを見てほしいのに」

と答えるのです。確かに記録をとって何度も見返すことも大切だと思います。しかし一番はじめに感じた印象「ファーストインプレッション」はその瞬間しか感じることが出来ません。記憶に残せば何度でも確認出来ると感じ、ファーストインプレッションを大切にしないとまでは思いませんが、やはりどこかにそういった意識が出てしまうのではと私も思います。この瞬間を大切にして時を重ねたいと思う玲の気持ちは素敵だし、私もそうでありたいと強く感じました。

 ラストは切なく悲しい結末です。しかし玲は最期まで間違いなく幸せだったと私は断言したいです。それは文化祭の準備を通じて百瀬がだんだんと変わっていくことが出来たからです。そして変わっていく彼を好きになれた。つらくて悔しいこともあったと思います。しかしこんな素敵な体験が出来た。それは誰にも記録することが出来ない心の記憶なのです。精神が満たされるってそういったことなのかなと私は思います。

まとめ

 幸せな結末だとは思うのですが悲しくもあり、ラストは泣きながら読み進めました。最後のシーンはやっぱり反則ですよ(笑)きっと百瀬はこの体験を通じて変わることが出来るでしょう。人を好きになることで前向きに成長する。とても素敵なことですね。興味をもったら是非手に取ってほしい。お勧めの作品です。優しい気持ちになれる素敵なお話ですよ。